「腸よ鼻よ」

しばらく前、せっかくの休みなんで、焼肉と北京ダックを中一日あけてがっつり食べたら、消化不良で十日ほど苦しんだ。

ふだん食べつけないゴージャスなものは、この年になると中一日では無理だという事を、身をもって感じた。

なんつうか、昔は一日で治ったものが三日かかり、三日で治ったものは一週間、そして一週間かかったものは半月以上ひっぱるのが、年を取るってことなんですね。

 

私は腹は丈夫な方なので、下すのも何年ぶりじゃ、というほどだったが、いざすんなり治らないとなると気弱になるもので、「はあ、このままずっと、いつお腹が下るかと心配する日々か・・・」などと思う時もあり。

 

というわけで、島袋全優「腸よ鼻よ」(KADOKAWA

 

潰瘍性大腸炎を患う作者の実体験に基づいた漫画だが、とにかく病状が半端ないのに全部ギャグという、振り切れた作品。

サクサク読めるが、待て、これがもし己の身に起こったら?と考えるとフリーズするほどの過酷さなのである。消化器症状ってのは本当に、QOL直結だものなあ。

 

実は私も婦人科系疾患由来で直腸切除の開腹手術を受けたことがあるのだけれど、切った腸がうまくつながらなかったら人工肛門、と言われて、かなり怯えた。

幸いなことに無事回復したが、食事を経口摂取できるまでの十日ほど、点滴で生き延びていた。

にもかかわらず、同室の患者さんの食事の時間になると、食べ物の匂いに反応して胃液が出るらしく、胃がイタタ。はい、点滴のラインを使ってH2ブロッカー注入ね、で抑えていたっけ。

 

本作は全10巻で、先日ついに完結したけれど、要するに10巻の長きにわたる闘病生活があったということなのだ。作者の健康回復に心よりの祝福を。

 

近頃の漫画家さんは紙にペンとインク、ではなくタブレットで作画する人が多いらしいが、こういう技術の進歩によって、身体の状態などが理由で漫画を描くことが難しかった人も、描けるようになるかもしれない。そんな人たちの新しい表現が出てくれば、世の中もまた面白くなるだろう。