納豆は誰のソウルフードか

今やさほどでもないのかもしれないが、日本に住む外国人に「納豆は食べられますか?」という質問は、かなりの「あるある」ではなかろうか。

この場合、観光客は含まれない。というか、海外からの短期旅行者に納豆なんか食えるわけねえし、といった根拠不明な「納豆国家の誇り」が我々日本人の心の奥底から湧き上がり、いきなりスクリーニングしてしまうようだ。

それほどまでに、「こんな臭いもん食べてる我々」のドヤ感は強い。

ところが、どうもこの納豆ナショナリズムを覆すような現実が、世界各地に存在するらしい。

というわけで

 

高野秀行「幻のアフリカ納豆を追え!そして現れた<サピエンス納豆>」(新潮社)

 

著者は世界各地を旅するノンフィクション作家だが、この本に先行するものとして「謎のアジア納豆」という作品を出している。

まあね、アジアくらいならね。稲作も雲南省あたりから伝わってきたんだし、納豆みたいなもんがあっても驚かない。納豆国家の民は多少の動揺を見せながらも、余裕の表情でアジア納豆の存在を受け入れた。

が、しかし、

アフリカにも納豆は存在するらしい。

この情報をもとに、著者ははるか西アフリカまで「アフリカ納豆」を探し求める旅に出るのだが、果たして、かの地に納豆は存在した。

材料も食べ方も様々ではあるものの、納豆菌で発酵した食品であり、あの匂い、あの味がするという。

日本のようにそのまま食べる、というよりは、料理の素材、うま味を出すための調味料として使われるらしい。

現地で供される数々の納豆料理がいかに美味か、読み進むうちに自然と納豆が食べたくなり、白ご飯と納豆だけじゃなくて、納豆汁も・・・という気になってくる。

もはや納豆は日本人だけのソウルフードではなかったのである。

 

ちなみに、韓国にもチョングッチャンという納豆の仲間があり、これを探し求めての旅も語られている。

しかしながら中国大陸はけっこうな空白地帯らしい。

そういえば香港に住んでいた頃、日本人の友人と集まって手巻き寿司を食べたことがある。友人の彼氏である香港人も来ていたが、納豆の匂いをかいで「腐ってんじゃないの?」と不審そうな顔をしていたが、やはり空白地帯のせいだろうか。