AさんとBさんの間で起きた事について
Aさんが語ることと
Bさんが語ることが
ずいぶん違う
いわゆる「見解の相違」という奴だが
AさんとBさんが個人ではなく
「民族」であった場合
話のスケールはかなり大きくなる
しかもAさんの声がやたらとデカく
Bさんの声はあまり通りがよくなかったとしたら
第三者はなんとなく
Aさんの話だけに耳を傾けてしまいそうだ
というわけで
この本は世間一般に言われる
「中国の歴史」を
モンゴルはオルドス出身の著者が
漢民族以外の民族を主軸として語ったもの
中国、と聞くと反射的に
「四千年」や「悠久の歴史」
という言葉が浮かんでくるが
始皇帝の秦
楊貴妃の唐
成吉思汗の元
西太妃の清
これらの国を支配していた民族は?
という事になると
漢民族ばかりじゃないんだわ
そう、現在の中華人民共和国である
東ユーラシア一帯は
さまざまな民族が覇を競った土地であり
その歴史を「中国史」と
ざっくり言うのに
待ったをかけたのが本書である
ここはひとつ
現在の中国では脇役の感が強い
遊牧民族を中心に据えた視点から
歴史をおさらいしてみよう
なるほどね~
言われてみると
この見方はなかなかに面白く
なんとなく「中国」だと思っていたエリアが
実はそうでもなさそうだとか
そっちから見ると
そういう史観なのかと
いわば歴史版イン・ハー・シューズ
どれが正しいという問題は置いといて
物事というのはやはり
いろんな角度から見るのが良いですね
これを読んで
数年前に読んだ姜戎の「神なるオオカミ」(講談社)を思い出した
漢民族の青年の物語
未体験ゾーンの遊牧生活を語りつつ
狼をキーワードに
遊牧民の歴史と文化について考察した本
これまた
あっち側からの視点が新鮮なのである