シベリアのミステリー

暑さを忘れる手段として

寒い本を読む

ドニー・アイカー「死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相」(河出書房新社

1959年、ソビエト連邦時代のロシアで起きた

冬山での遭難事故

場所はシベリアの入口、ウラル山脈

物理的に極寒なのは当然として

登山経験も豊富な若者九名が

装備をテントに残したまま

軽装で靴もはかず

強風の吹き荒れる雪原に出て行き

そのまま遭難したという

極めて不可解な状況

よって背筋が寒い

 

発生当時は封印されたこの事件が

情報公開で人々に知られるとともに

国家機関の陰謀、UFO、諸説入り乱れつつ

真相は謎のまま

そして遠く離れた現代のロサンゼルスに住む著者が

その謎を解くべく現地に向かう

 

「死に山」というタイトルの

なーんか座りの悪い響きに

まさかトンデモ本な結末ではあるまいな

若干心配するものの

版元のブランドと

刊行後三か月で五刷という売り上げを信じ

ページを繰る

なかなかに凝った構成で

登山隊の出発から遭難までと

捜索活動と

著者の調査活動が

並行して進み

最後にあっと驚く真相解明

・・・・・

あるんですねえ

そういう事が

 

それにしても

冷戦体制下

社会主義国家での生活

自由を享受しているつもりの我々からすると

窮屈で退屈で

灰色の日々に違いないと

思い込みがちであるが

そこにはちゃんと

若者たちの生き生きとした

青春が息づいているのである

謎解きもさることながら

こちらも本書の魅力

戦時中もそうですが

皆が皆

四六時中

息をひそめていたわけではなく

今の我々と同じようなことを

喜び、悲しみ

日々を送っていたんだわ

 

ところで

シベリアのミステリーファイルといえば

ツングースカ

隕石衝突だと言われているが

それじゃ説明できない事も

あるらしいじゃないですか

究極の答えが知りたい・・・