美意識過剰

猛暑日って奴が続いております

しかしまあ

湿度ばっかり高くて気温はさほどでも

なんて天気よりは

このように節操のない暑さの方が好ましく

死んだように静まり返ってる

真昼の通りを歩くのも

そう嫌いではない

帰宅してゆっくり読書

金子國義「美貌帖」(河出書房新社

この人の絵は大好きなんだけど

プライベートな部分はほとんど知らなかったので

 

え~?こんな本出てたの?

飛びつく感じで読みました

自伝、というか

自由自在な回顧録というべきか

着物、映画、歌舞伎、バレエ、料理、器

幼い頃から筋金入りの美意識過剰

ちょっと意外だったのは

独学の人かと思っていたのが

舞台美術の師匠に弟子入りするところから

キャリアを始めていた点

まずは伝統や様式美を身体に叩き込み

それが全ての基礎になってたんですね

「本当にいいものは、自分の考えを入れずにそのまま写しとることが大切である」と

日本の伝統芸能における

「型」の伝承を非常に重視していたけれど

ご本人は突き抜けた個性の持ち主

思うに

「型になんかはめられず、個性を伸ばしたい」

などという主張は無意味というか

型にはめても滲み出てくるのが個性なんすかね

時代の空気もあいまって

破天荒なエピソードの数々はとても面白いけれど

その一方で

創作に対して非常にストイックでもあり

流されることなく

芯の通った生き方を貫いた人

 

本の装丁もご本人だけど

表紙はもちろん

見返しの色も挿絵もよくて

更に各章の扉の絵がいいのよ

さらっと描いてあるけど

味わい深い

アトリエとか

見てみたいと思う一方で

自分の部屋の

これまた節操のなさに

限りなくトホホな気分になった