脱・日本社会

通販やら

パソコンのサポートやらの

コールセンター

 本社所在地にあると思ってたら

実は随分離れた場所にあったりする

それどころか

海外にもあるんですよ

たとえばタイのバンコク

といっても

電話がかかってくるのは

日本からなので

働いている人は日本人

しかもかなり大勢

一体彼らはどういう人たちなのか?

水谷竹秀「だから、居場所が欲しかった バンコク、コールセンターで働く日本人」集英社

この本はその「彼ら」

それぞれが日本を離れ

異国のコールセンターで働くようになった経緯

さらにはその後の日々まで

長い人では数年にわたって取材したもの

 

コールセンターでの勤務は

日本語のネイティブでさえあれば

他のキャリアやスキルは問われない

つまり、ほぼ誰でもできる仕事で

ノルマも残業もない

故に賃金は低く

現地の日本人社会ヒエラルキーにおいては

暗黙のうちに下層と見做される

とはいえ

贅沢をしなければ

タイでは十分に生活していける

何とも微妙な

ぬるま湯的環境

そして

「海外で働く人」に対して我々が漠然と抱くイメージ

「将来への希望に満ちた若者」ではなく

日本社会での生活に倦み疲れた三、四十代という

決して若くない人々が

そこで働いている

 

彼らの背景はそれぞれであり

決して一括りにはできないが

やはり

就職氷河期だとか

非正規雇い止めだとか

そういった社会的要因は無視できない

しかし彼らの多くにとって

コールセンターは通過点でしかない

そこからまた

次の場所へと

転がってゆくのだ

それでも彼らは日本へ戻るという選択をしない

なぜなら

今いる場所の方が

日本よりずっと居心地が良いから

自分自身でいられるから

 

さて

繰り返し語られる

日本社会の閉塞感だとか同調圧力だとか

ずっと日本にいると

段々判らなくなってきたりするなあ

かく言う私も

昔は香港で働いていたことがあるけど

やはり母国ではない場所で働き、生活するというのは

そう楽な事ではない

それを思うと

彼らに対して

いや立派立派

などと思ってしまうのよ

いいじゃないですか

結局のところ

人生一度きり

我慢ばかりしていても仕方ない

特に

ゴーゴーボーイにハマった藤原姉妹

このフルスロットルぶりはどう考えても

日本社会などという

狭いところに収まりきらない

彼ら、彼女らの未来に幸あれ