「SUKITA」

写真家 鋤田正義

といってもたぶん世間一般には

篠山紀信とか

アラーキーほどの知名度はなく

は?誰それ?

という反応になる人が多いだろうが

彼が撮影した

デヴィッド・ボウイマーク・ボラン

YMOイギー・ポップの写真を見れば

あ~、これ知ってる

という人がざっくざく

今年80歳になる自身のキャリアを振り返り

思い出の地を再訪し

被写体となった人々と語らう鋤田氏

なーんかただの好々爺にも見えるんだけど

その年齢にも拘らず

好奇心に富んだ

柔らかな魂の持ち主

彼が残してきた写真は「過去」ではなく

その時どきの「いま」で

だからいつまでたっても

古くならないのかもしれない

 

高校時代にお母さんを撮ったという

モノクロの写真はまるで

土門拳だよ

スタジオで撮影された

アーティストの写真もいいけれど

オフの時に見せる

寛いだ表情もいいですね

これはやっぱり信頼関係のなせるわざ

阪急に乗るボウイ

地上を走ってた頃の京津線を背にしたボウイ

古川商店街でお買い物のボウイ

茶室のイギー・ポップには笑ったわ

 

そろそろ引退して福岡に帰ろうかな

みたいな事を言ってたけど

まだまだ仕事してほしいもんだ

 

ところで

こういうドキュメンタリーでは

「あの時代は特別だった」的な表現を使い

暗黙のうちに「それに比べて今は」と

現在の閉塞状況だとか停滞感を

ほのめかす人がいたりするが

それはもしかして

「今」を生きている

己の怠慢ではなかろうか

後の世から見た「今」を

「特別」にするのは

現在の自分である

面白きこともなき世を面白く

せめてそういう

心づもりで