「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの挽歌」

満洲国」

この名を目にして連想する言葉

ラストエンペラー

開拓団

李香蘭

満鉄

ソ連軍侵攻

人それぞれとは思うが

そこに大学が作られていたとは

知らなかったよ

三浦英之「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの挽歌」(集英社

この本で語られる建国大学とは

満州国のいわば「国策」として創設された

幻の大学

五族協和」というスローガンを実現すべく

日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの各民族から

優秀な学生を選抜して

エリート教育を行った

何より特筆すべきは

学内で言論の自由が保障されていたという点

だがそれ故に

この大学は矛盾を抱える

戦時下という状況において

無邪気な理想論を基盤にした

「仮想現実」とも言える場所

そして日本の敗戦とともに

その存在は抹消され

卒業生たちはそれぞれ

過去と決別して

激変した世界を生きることになる

消滅した国家と

そこに作られた幻の大学

しかし学生たちが育んだ固い絆だけは

何十年という時と国境を超えて

尚も互いを結び続ける

 

私の手元には「大満洲国」と刻印された

五分硬貨がある

祖母の遺品から出てきたのだけれど

彼女はずっと内地にいたので

たぶん誰かにもらったものを

「外国の硬貨」的な感覚で

とっておいたのだろう

私がこれを保存しているのは

自分の国が過去に犯した愚行と

国は平然と国民を欺くという事を

忘れないためである

 

この本を読了して何故だか

イエモンの「SO YOUNG」が

聴きたくなる

紛れもなく青春の記録