「大奥の女たちの明治維新」

「大奥」に駄作なし

万が一、色紙に一筆などと頼まれたら

この言葉を書きたいと

そう思うほどの

私は「大奥」好きである

といってもシステムそのものではなく

ドラマ、映画で

タイトルに「大奥」と入っていれば

これはもうほぼ100%楽しめる

男女逆転だろうが

「んな馬鹿な」という設定が紛れ込んでいようが

「上様、おな~り~」の一声で

いとも簡単に大奥ワールドへの

お鈴廊下を渡ってしまうのだ

 

というわけで

安藤優一郎「大奥の女たちの明治維新幕臣、豪商、大名ー敗者のその後」(朝日新聞出版)

ドラマと映画により

テーマパーク化している

私の「脳内大奥」を修正するべく

本当のところ、どうだったんですかね

というのを探ってみる

とはいえ本書の主題は明治維新

タイトルは「餌」だった

なので大奥について割かれているのは第一章のみで

あとは江戸城に仕えていた幕臣だとか

江戸城に出入りしていた商人だとか

全国各地の大名だとか

徳川幕府が支配していた世の中から

明治維新によって放り出された

いわば負け組たちの「その後」に触れる

 

どうしたって歴史というものは

勝者が己の正当性を高めるために

自分に都合のよい話だけをまとめて

「これが正史じゃ」と

言い切るものだけれど

その陰で

激変した世界を生き延びた人たち

それぞれの見た光と闇が

現在に続く本当の歴史を作ってきた

いまこの時代も

あと何年もすれば

「平成という分岐点」などと

言われたりするんだろうか

流れの中にいる者には

一体どこに漂着するのか

さっぱり判らんものですね

 

てことで

やはり「大奥に駄作なし」であった