「おとこのるつぼ」

群ようこ「おとこのるつぼ」(新潮社)

男という生き物について

これでもか

これでもかと

その駄目っぷりを

憎しみを込めて

ではなく

淡々とした筆致で書く

ハゲに怯える

小さなプライドに固執

金に細かい

いるよなあこういう人

読み進めるうちに

激しく頷きつつも笑う

これが田辺聖子だと

「とはいえ男とはこういう所が可愛いのである」

という結論になるが

群ようこの場合

「ため息をつくしかないのだ」

という結びになる

かたや、父親の大きな愛と庇護を受けて育った女性

かたや、浪費癖のある父親を常に警戒して子供時代を過ごした女性

結果として男性観に大きな隔たりを生じる

群ようこのすごいところは

「だからこんなに不幸なんです」的な

自己憐憫のかけらも見せず

あくまで淡々としている点

彼女のスタンスは

初期の頃からまったくと言ってよいほどぶれない

エッセイストの中には

数年のうちに

書いてることが激変する人

というのもいる

これはこれで

その変わりっぷりに

鑑賞価値があるのだけれど

群ようこのキャリアの長さと安定性

なぜかいつも

高橋留美子を思い出してしまう

 

ところでこの本

初出は「新潮45」とある

読者の大半は「おじさん」

つまりこれは、啓蒙の書か?

いえいえ

これを読んで

「ひでえな~。でも俺は違うからな」

そう言えるのが

男という生き物だと思う