「ゴースト・ボーイ」

マーティン・ピストリウス著「ゴースト・ボーイ」PHP

 

長年にわたって植物状態だった少年が

徐々に意識を取り戻す

しかし身体は思う通りに動かず

言葉も出てこない

周りの人々もその事に気づかない

しかし一人の注意深い女性によって

彼はその孤絶した状態から救い出され

パソコンを介した意思伝達という

世界との接点を手に入れ

人生の伴侶と出会う

とても珍しく、貴重な体験談

 

これを読むと

意識がないと思われている人でも

やっぱり色々と判ってるんじゃないかと

そんな気持ちにさせられる

実際に彼は

介護にあたる人々の声や目、触れ方といった

些細な情報から

相手の感情を正確に察知していた

しかし回復が進み

他者とのコミュニケーションが可能になると

自分が発信するという行為に力をさくため

かつてのずば抜けた感受性は失われてしまう

もしかすると健常者である我々も

受け止める、という事に百パーセント集中すれば

人の心の内が読めるのかもしれない

でもそれは

とても恐ろしい事でもある

怒りだとか

軽蔑だとか

知りたくない事も

知らなくてはならない

だからやっぱり

人間関係のアンテナは

感度50パーセント

たまに受信不能ぐらいが

いいのかもしれない