「カリ・モーラ」

帰省ラッシュたけなわのようですが

 今週は一日だけ出勤

ここで一週間まるまる休みにして

社員に楽しい思いをさせたくないのが

うちの社長という人なんだわ

 

というわけで

こういう時は

上には上、の逆バージョン

もっとどうしようもない奴の話を読むぜ

トマス・ハリス「カリ・モーラ」(新潮社)

言わずと知れた「羊たちの沈黙」の作者

レクター博士の生みの親による新作

麻薬王の邸宅の地下にあるという

金塊を隠した金庫をめぐり

筋金入りの悪党どもが

仁義なき戦いを繰り広げる

そこに巻き込まれる

美貌のヒロイン、カリ・モーラ

タフな彼女は凄惨な過去を持つ移民で

動物を愛する心やさしい女性

 

一冊にまとまってるけど

中味は濃厚な本作

悪い奴らが互いの腹を探り合いながら

血で血を洗う金塊争奪戦

たまに謎の猛獣まで乱入し

ジェットコースター的展開はノンストップ

おまけに

最後の最後になって

何?今からこの展開で

残りこのページ数で収まるのか?

まさかのシリーズ第二作へ続く?

と心配させておいて

すっきりまとめるという名人芸

あー面白かった

しかしこれを読むと

マイアミの海でとれた蟹だとか

缶詰エスカルゴだとか

まあ食べる機会もないと思うんだけど

・・・ぜったい食えんな

 

なんか映画化されそうな気もするが

映像にしてほしくない部分も色々あり

やはりこういうものは

活字で楽しむのが一番かと

 

 

 

 

 

 

美意識過剰

猛暑日って奴が続いております

しかしまあ

湿度ばっかり高くて気温はさほどでも

なんて天気よりは

このように節操のない暑さの方が好ましく

死んだように静まり返ってる

真昼の通りを歩くのも

そう嫌いではない

帰宅してゆっくり読書

金子國義「美貌帖」(河出書房新社

この人の絵は大好きなんだけど

プライベートな部分はほとんど知らなかったので

 

え~?こんな本出てたの?

飛びつく感じで読みました

自伝、というか

自由自在な回顧録というべきか

着物、映画、歌舞伎、バレエ、料理、器

幼い頃から筋金入りの美意識過剰

ちょっと意外だったのは

独学の人かと思っていたのが

舞台美術の師匠に弟子入りするところから

キャリアを始めていた点

まずは伝統や様式美を身体に叩き込み

それが全ての基礎になってたんですね

「本当にいいものは、自分の考えを入れずにそのまま写しとることが大切である」と

日本の伝統芸能における

「型」の伝承を非常に重視していたけれど

ご本人は突き抜けた個性の持ち主

思うに

「型になんかはめられず、個性を伸ばしたい」

などという主張は無意味というか

型にはめても滲み出てくるのが個性なんすかね

時代の空気もあいまって

破天荒なエピソードの数々はとても面白いけれど

その一方で

創作に対して非常にストイックでもあり

流されることなく

芯の通った生き方を貫いた人

 

本の装丁もご本人だけど

表紙はもちろん

見返しの色も挿絵もよくて

更に各章の扉の絵がいいのよ

さらっと描いてあるけど

味わい深い

アトリエとか

見てみたいと思う一方で

自分の部屋の

これまた節操のなさに

限りなくトホホな気分になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲んだら・・・

人づてに聞いた話だが

怖すぎるので

書き留めておこう

Aさん(男性)

友人と夕食だけのつもりが

飲んでしまった

車だったので

運転して帰るわけにもいかず

とりあえず乗り込み

酔いがさめるまで

車内で眠って過ごすことに

 

目が醒めると

外の風景が変わってる

てか、ここ、自宅なんですけど?!

一体何が起こった?

慌ててドライブレコーダーを確認すると

自分でも全く記憶のないまま

車を運転し

帰宅していた

しかも工事現場を通る時は

しっかり徐行してるし

だが

安全運転に見えても

立派な飲酒運転

幸い

事故も起こさず

警察のお世話にもならなかったが

何より自分自身が恐ろしい

というわけで

飲んだら

車に近づくな

てことだな

 

さてもう一つ怖い話は

早期退職した夫が

退職金を全て

投資話に突っ込んでしまい

しかも見事に駄目んなって

さらに欠損分を

持ち出しで補填までする羽目に

・・・

絶対大丈夫っていう

投資話だったそうだが

絶対

絶対大丈夫

ねえ・・・

 

 

 

 

栗本薫と中島梓

あら

気がつくと世間は夏休み

昨年の猛暑が記憶に新しく

今年の暑さの緩やかさに

まだ夏も序の口

みたいに思ってました

でも今週からどーんと来るみたいね

 

久々に遠出もしない週末で

本でも読むかと

里中高志「栗本薫中島梓 世界最長の物語を書いた人」早川書房

驚いたのが

栗本薫が亡くなってもう十年

早いもんですなあ

読んでたよ、「グイン・サーガ

途中で脱落したけどね

文字数の割に話が進まん

というのもあったが

数年日本にいなかったせいで

フォローかなわず

リギアさんとか好きでした

「魔界水滸伝」も

友達に借りて途中まで読んでました

 

とはいえ

栗本薫中島梓に対する私の印象は

饒舌な割に本心の見えにくい人

なんか小説もエッセイも

ちゃんと書いてあるんだけど

なんか他人行儀というか

作物でいえば

上の方だけざーっと刈り取ってきた感じで

根っこから一本丸ごと掘り出してきた

というものではない

まあ、常人離れした執筆速度を考えると

納得もするんだけど

 

そういう事を思い出しながら

読んでみると

傍目にはとても恵まれているのに

本人から見ると

両親の愛は全て障害のある弟に注がれているという

なかなかに苛酷な少女時代で

しかも両親ともに

非の打ちどころのないような人であるところが

更に事を深刻にしているような

こういうのって

当事者でないと判らん系の苦しみですね

この人はもしかすると

書くことで精神の平衡を保っていたというか

書かないとたぶん

頭ん中がパンクして

正気を失っていたんじゃないだろうか

 

彼女の活動は執筆だけに留まらず

自作の舞台演出や音楽活動へと広がってゆくけれど

たとえば小説という分野で

年月とともに深度を増す、という形ではなく

同じ深度で表現形態を変えていった

そんな印象があって

ある一定の深さより先には

踏み込むのを避けていたのか?

という気もする

 

ずっと昔に読んだ文章で

彼女は村上春樹の作品を

「現実逃避の胎内返りだ」的な表現で厳しく批判していた

あれから随分たって

村上作品が世界中の人々に支持されている現在の状況を

彼女がもし存命なら、どのように見るだろう

あくまで想像だけれど

あの批判の理由

彼女は村上作品の中に

自分が目を背けてきたものを

見てしまったんじゃないかという気がするのだ

 

ともあれ

彼女のような人は

もう二度と現れないだろう

 

 

 

 

 

 

 

初・OSK@南座

縁あって

OSK日本歌劇団を見に南座

演目は歌劇「海神別荘」とレヴュー「STORM of APPLAUSE」

はっきり言って

そう期待してなかったんですが

よかったよ

特にねえ

男役トップの桐生麻耶さん

チラシの写真見た段階ですでに

存在感ありすぎ

実物は更にオーラが!

歌もよかったよ

で「海神別荘」ですが

これ、アニメの「サクラ大戦」とのコラボらしくて

でも不勉強な私は

サクラ大戦」知らんのですわ

ということで

あくまで泉鏡花原作の歌劇として見たけど

随所に出てくるオリジナルのテキストが

いやーもうダントツに美しかった

そして内容もなかなかに

現代に合ってるというか

これはSNSに翻弄される者への警告か?

と思わせるところもあり

面白かった

「夜叉が池」でもそうだけど

異界からの視点で

贄=犠牲者=弱者としての女性を媒介に

人間社会の欺瞞を指摘する

という構造になってまして

これを可能にしたのは

鏡花自身に揺るぎない価値観というか

己の美意識があったからであろうと

そういう点では

オスカー・ワイルドを連想したりもする

 

第二部のレヴューも楽しかったです

宝塚大劇場とはまた違う

コンパクトな南座という空間で

ミラーボールも回り

ラインダンスもあり

フィナーレでは皆さんが階段を降りてくる

そして幕が下り

鳴り止まぬ拍手に再び上がって

カーテンコールかと思いきや

団員さんたちは手に手に

桜色のパラソルを持っている

そしてOSKのテーマソングを歌い

(宝塚における「すみれのは~な~」か?)

ふと見ると

客席のコアなファンの手にも

小さな「桜パラソル」が!

これが本当のグランドフィナーレだった・・・

いいよねえ

こういう「お約束」って

 

さて

「海神別荘」の舞台は

太平洋ではなく

日本海であろうと

勝手に思ってるんだけど

実は私

劇団四季「リトル・マーメイド」のチケットを

押さえております

十月だけど

次はカリブ海・・・

楽しみじゃ

 

干からびていた

こないだ

梅雨のさなか

世間でも注意を喚起されている

夜間熱中症とやらに

なったみたいで

朝起きたら

め、めまいが

くるくるくるくる

じっとしてると収まるが

頭を動かすとヤバい

職場に休みの連絡を入れ

水飲んでひたすら眠り

ほんとうに丸一日ぐらい眠り

復活

そういえば前日あたりから

なんか口の中が塩辛いな~

とか

なんか足が重い

とか

あんまり水飲んでないな

とか

危険信号はあったのよ

先週は休みも少なかったからな

あまり暑くないこの時期

実は干からびていたということ

実際

手の甲をつまんでひっぱると

戻りが遅かった

今はちゃんと戻るのよ

あー怖い怖い

 

 

 

SWITCHとか大阪とか

ようやく梅雨入りしたと思ったら

もう7月じゃないの

九州じゃずいぶん降ってるようで

昨年のことなど思い出し

皆さんどうかご無事で

 

なんか色々忙しいうちにも

SWITCH7月号は届き

付録のポスターはちゃんと筒状に巻かれて無事

表紙の写真なのね

吉井さんとアニーが爆!な感じで

ヒーセはリラックスした笑顔

そしてエマちゃんはノーブルにポーズが決まってるという

ああ楽しげな

そして中味のロングインタビューも濃い!

なるほどねー、やっぱ今だから語れることもあるよねー

などと

頷きながら

もったいないので少しずつ

読んでいたのである

 

そして更に

芸術新潮7月号が萩尾望都特集ってことで

こちらも太っ腹にお買い上げ

表紙は贅沢にも描きおろしですが

これももったいないので

少しずつ

と思ったけど

ほぼ一気読みしてしまった

10日には「ポーの一族」の新刊が出るそうで

これを楽しみに・・・

 

さて先日読んだのが

中沢新一「大阪アースダイバー」講談社

アースダイバーというのは

ある地域の文化の成り立ちを

地理的構造から読み解く試みと理解したけれど

ざっくり言えば

元祖「ぶらタモリ」みたいなもんでしょうか

これを読んで

以前から大阪という土地に対して抱いてきた

さまざまな疑問につき

あらそうなんだ~と

いろいろ納得

もちろん恣意的に解釈した部分もあるだろうけれど

日々更新されてゆく大都市でありながら

意外なほど古い貌をあちこちに覗かせる

大阪の新たな魅力を発見

奈良や京都と違って

その古さはちょっと判りにくいのだけれど

残す努力をせずとも残ってしまうほどの

濃厚な古さ、とでも言おうか

 

そんな大阪の

霊場」の一つである石切に

ラドン温泉の湧くホテルがあるらしいんだけど

ここに泊まって

大阪平野を一望したくなってきた

なんといっても

パワースポットですし