「赦す人」

カバーが駒を並べた将棋盤で

その上に白黒の写真が三枚

おまけに著者が大崎善生とくれば

ああこりゃ「聖の青春」系統の

そう思う方も多いであろう

「赦す人」(新潮社)

たしかに評伝ではあるが

語られているのは棋士ではなく

SM界のレジェンド

団鬼六

あの「花と蛇」を書いた人ですね

うちにもあったよ

親父コレクション

けっこう大きい判型だったので

奇譚クラブ」の増刊ではなかったかと

もちろん、カバーかかってた

 

そんな鬼六先生の人生は

緊縛あり蝋燭あり

ではなく

山あり谷あり

父から受け継いだ相場師根性と

母から受け継いだ文才を

余すところなく開花させ

夜逃げから鬼六御殿

SMから純文学

最大限の振れ幅で

楽しみ尽くす

今はなき昭和の

酒と煙草の匂いが全編から立ち上る

優しきアウトローの一生

 

ところで

たこ八郎をずっと飼って(?)たの

鬼六先生だったのね

ブレイクしてからのたこちゃんしか知らなかったので

おどろいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

台風の夜

職場の近所は

けっこう有名な観光地

昨日、お昼を食べに出かけたら

台風接近中で

日本人の姿はなかったものの

海外の方はちらほら

ホテルでじっとしてるのも何だかな

という感じですかね

 

その昔、香港に住んでた頃

連休を利用して台湾ひとり旅

むしょうに温泉が恋しく

台北の近くにある

北投温泉へ

予約もとらず

部屋ありますか~、とお宿に行くと

けっこうな割合で

連れ込み宿だったりして

ようやく一軒の古びた宿へ

ちょうど台風が接近していて

近所をうろつくこともなく

缶詰状態

風呂も大したことなく

薄暗い部屋でごろごろ

仕方ねえな、とテレビをつけると

日本のBSが入る

なつかしや

しばらく見てると

映画が始まった

さらば青春の光

他にすることもないので、見る

イギリス、六十年代、モッズ、薬物、ザ・フー

ダミダミな若者映画

ここ台湾なんですけど

台風来てるんですけど

あたしゃ何やってんだろうね

シュールな夜

 

こういう

出会いがしらの事故みたいな映画ほど

記憶に残ったりする

それにしても

これに出てたスティングは

カッコよかった

エースって名前なんだけど

アイス、と聞こえたのは

イギリス英語って奴ですか

もう一度見たいと思うけど

あれ以上ダミダミなシチュエーションもないので

もういいか

 

これから台風が接近する地域の皆さん

どうかご無事で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首が長すぎる

旅の続き

石川九楊展の後、千葉へ

幕張メッセはこれまた

けっこうな賑わい

色んなイベントをやってるらしいが

私の目的は

「ギガ恐竜展2017」

毎年夏になると

こういうのやってるけど

一度行ってみたかったのよ

場内はもちろん

子供子供子供大人子供子供大人子供子供子供

盛り上がっております

ああそして

恐竜たちの全身骨格があちこちに

今回の目玉はやはり

全長約38メートルの首長竜

ルヤンゴサウルス

首、長すぎ

そう突っ込みたくなるほど

長い

これで生活できてたんだから

不思議だねえ

その名の通り

この恐竜は中国は河南省

汝陽(Ruyang)の出身

中国医学では

出土した化石を「竜骨」と呼び

薬として服用するらしい

その昔

学者、羅振玉がこの「竜骨」に

何やら刻まれていることに気づき

「これ、文字じゃね?」

と考えたのが

甲骨文字の発見につながり・・・

以下略

「竜骨」は哺乳類の骨だったけれど

恐竜の骨は本当に埋まってたんだから

土の中から出たものを

「竜の骨」だと思ったのは

当たらずとも遠からず

いい勘してますね

 

他にもいろんな恐竜の

全身骨格が並んでたけど

子供たちの一番人気はやはり

ティラノサウルス

動くロボットだった

そりゃそうだよねえ

骨だけより

リアルな方がいい

次はルヤンゴもお願いします

 

東京駅から

帰りの駅弁は

深川めしにしたよ

安定のおいしさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の季語

世界陸上

いつの間にかまたやってる

という話を職場でしていて

ふと

織田裕二」って

夏の季語になるかどうか検討

でもまあ他にドラマもあるので

夏一本ではない

却下

TUBE

異議なしで通過

稲川淳二

異議なしで通過

「松岡修造」

熱いというだけで

夏ではない

却下

他の季節も検討中で

広瀬香美」が冬の候補

ちょっと古すぎるか

 

ところで今日

近所のペットショップへ行くと

スコティッシュフォールド、立て耳の

サビがいなくなってた

家族に出会えた模様

幸せになれ~

 

 

 

石川九楊展「書だ」

日曜のJR上野駅

十時と少し前に着くと

そりゃもうすごい人

主に親子連れが

わっさわっさと公園に

流れこんでゆく

夏休みだねえ

その流れを少し避けて

上野の森美術館

石川九楊展「書だ」を見る

最終日ということもあるのか

けっこう並んでおります

 

磔にされた

キリストの言葉から始まる大作

その上には李賀の詩

真っ黒に塗られて

何だかわかりゃしねえ

と一瞬思うけど

実は字が書いてある

その、きわっきわの

墨の深さ

七十年代の作品には

京大の立て看板の匂いがある

猥雑とも言える世界

そして一転

静けさに包まれた

日本の古典へ

とはいえ

一筋縄ではいかない

線と線の交錯

乱れた女の髪

脳波

ヒエログリフ

神経細胞

木の根っこ

色んなものに似ているが

よーく見ると

ちゃんと出発点がある

「かな」だったりする

なんかね

楽しんでるな、と思ったよ

もちろん

そう楽して書いたものじゃないだろうが

 

一通り見終わり

物販コーナーへ行くと

九楊先生サイン会の真っ最中

時間がないので列にはつかなかったけど

しばし筆遣いを拝見

けっこう寝かせて書いておられた

こんど真似してみよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スペインの宇宙食」

旅のお供は文庫本

菊地成孔「スペインの宇宙食」(小学館

何年か前にEテレの「わたしが子供だったころ」に

著者が出ていて

色んな意味で濃い人だと思った

そして今ようやくその作品を

ホテルのベッドに寝転んで

・・・

なんじゃこりゃああ!

松田優作ばりにそう叫びたくなる

めくるめく世界がそこに

危ない危ない

こんなもの一気読みしたら眠れなくなる

音楽と

食事と

記憶と

官能と

混然一体となって猛スピードで突き進む

かと思えばうらはらに

醒めた視線が

高いところから見下ろしている

 

この人は

鋭すぎる感覚のせいで

けっこう大変だったんじゃないかと

(というか、大変な事になったらしい)

たしかカート・ヴォネガット

作家とはカナリヤみたいなものであると言ったけど

炭鉱で人間よりも早く

悪い空気に反応して

死んでしまうカナリヤのように

作家は時代の先にあるものを感じ取る

そういう意味では文中に登場する

DCPRGの活動なんか

9.11とそれ以後の世界を

はっきりと予感していたのかも

 

ほどほどなところで中断して

残りは帰りの車中でガーッと

ああやっぱり

なんじゃこりゃ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行けない場所

行けない場所に行ってきた

そんな錯覚ができた

沖ノ島展」(日本橋高島屋

つい先ごろ世界遺産に認定されて

何かと話題の沖ノ島

女人禁制なのはもちろん

男性でも神職以外はほぼ立入禁止

上陸するにあたっては

全裸で海に入っての禊が必要

そして周囲は玄界灘

そんな孤島に

写真家 藤原新也が足を踏み入れ

何百年も人の手が加えられていない原生林と

巨石の座する聖地を

カメラに収めてきた

会場を訪れた我々は

その足取りを追体験するように

荒れ狂う波を越え

身を切る海の冷たさに

魂を覚醒させ

蜥蜴と化して

原始の森を這い

水鳥に宿って

薄明の空にはばたく

 

会期は明日までなんだけど

もっと他の街でも

沢山の人に体験してもらいたい